消された年金と憲法25条
● 年金時効撤廃特例法案は衆院を通過したが
政府与党は、議員立法の形で、「年金時効撤廃特例法案」を提出し、6月1日未明の衆院本会議で可決されたとのことである。
率直に言って(正直言って)、法案の中身はこれから調べようかと思っている状態なので、偉そうなことは言えないのだが、それにしても、ドタバタでしたね。
最初、この国の首相は、騒がないでくれなんてことを言っていた。それが急転直下、他にも重要法案が目白押しの状況にもかかわらず、十分に審議時間も経ずに強行採決した。余りに見え透いてますよね。ただ、選挙が恐いという一心に過ぎず、本当に国民のことを考えたとは、残念ながら思えない。
● 消された年金はどんな基準で復活するのか?
確かに、時効撤廃は大事。だが、それだけでは問題は解決していない。というか、最大の問題が残っている。どのような場合に消された年金を復活するのか。領収証がなくても認めるとしたのは、一歩前進ではある。しかし、どのような事実が証明できれば、これを認めるとするか、その基準を策定するのは容易な作業ではない。また、最終的な立証責任をどこまで誰が負うのか、きちんと議論しなければならない。これも簡単な話ではない。
年金の時効の撤廃以上に、この問題をきちんと議論して合理的な大多数の国民が納得できる基準を決めなければ、何も解決していない。
今後の政府の動きを厳しく監視していかなければならないと思う。国会でこの点がどのように議論されて行くのかも、見つめて行く必要がある。
● 改めて憲法25条を考える
さて、ここで憲法25条である。
憲法25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めている。国民年金などの社会保険が、これを受けた社会保障制度の一環であることは、言うまでもない。
約5000万件もの該当者不明の年金記録をつくり出してしまった(というか、本来の権利者からすれば消されてしまったというべきか)国の責任は、重い。その国のトップが、問題が発覚した途端に、まず「騒がないで欲しい」旨発言するようでは、とても安心して国の舵取りを任せておけない。少なくとも、今ある憲法をきちんと守ろうと考えない人間に憲法改正を主張する資格があるのか、甚だ疑問である。
(追記)
衆院を通過した議案の中身は、衆院のサイトで見ることができる。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
とても分かりづらいが、条文自体は5条までしかなく、単純なものである。おおまかに整理すれば、①保険給付を受ける権利に係る裁定後の保険給付を受ける権利についての消滅時効の不適用、②政府は年金個人情報について(関係者の協力を得つつ)、正確な内容とするよう万全の措置を講ずるものとするとの政府の責務、である。
時効の不適用を確認したことだけに意味があるが、政府の責任はあいまいである。「正確な内容とするよう万全の措置を講ずる」とはどういうことなのか。国会議事録を見てみないと何とも言えないね。
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