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2007年6月 7日 (木)

憲法9条が変えられたらどうなる?(3)-軍事裁判所(2)

 自民党の新憲法草案に書き込まれた「軍事裁判所を設置する」(第76条3項)については、今のところ、余り議論されていない様子ですし、正直言って今まで余り重視していなかったのですが、昨日も紹介した田岡氏の説明を拝見して、実は極めて重大な条項ではないかと思い始めました(お恥ずかしい)。
 改めて、条文を眺めてみますと、

第76条(裁判所と司法権)
③ 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。

となっています。

 これだけを眺めてもよく分からないので、現在の日本国憲法を比較してみましょう。

第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

 現行の日本国憲法は、特別裁判所の設置を禁止しており、司法権は、最高裁判所を頂点とする裁判所が独占する構造になっています。これは、法的紛争については、全て民主的な手続で選任された裁判官によって裁くことにし、行政機関が裁くとか軍法会議が審理するなどの例外を一切認めないという趣旨です。

 ところが、ここに軍事裁判所という特殊な存在を持ち込もうというのが、自民党の新憲法草案ということになります。批判を回避しようとしたのか、現行の日本国憲法の他の条項はそのまま残しましたので、軍事裁判所は特別裁判所ではないということには一応なります(そうでなければ条文自体が矛盾していることになります)。控訴・上告によって高裁・最高裁による三審制を維持する限りにおいては、その範囲で民主的な担保があるということになるのでしょうか。

 しかし、そうであるなら、敢えて軍事裁判所を設ける意味が余りないわけですし、名称からして明らかに軍人や軍隊に関わる紛争を裁くことを予定しておりますから、ここの条文の構造は、矛盾を抱えていることになります。

 この矛盾は、将来修正されるのではないかと思うのですが、修正の方向は国民にとってよい方向に行くとは思えません。

 また、軍事裁判所の審理の対象も問題となります。軍人の犯罪行為を裁くのが第1の役割になると思いますが、「たむ・たむ(多夢・太夢)ページ」(http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/index.html)さんの「自民党新憲法草案に関する各政党の主張」を見ていたところ、「『軍事に関する裁判』の対象が軍人に限定されるとは限りません。“軍の機密を守る”という名目で一般国民も憲兵隊の監視対象とされ、「軍事に関する」法律に違反したとみなされれば、軍事裁判所で裁かれる可能性もあります」との記述を発見しました。本日報道のあった陸上自衛隊情報保全隊の逸脱行動http://www.asahi.com/national/update/0606/TKY200706060369.html)を知ると、そういうことが十分に考えられますから、恐ろしくなります。(この問題の詳細は、これを告発した日本共産党のホームページで見ることができます。→ここ

 「法律の定めるところにより」との文言は、前後にこれを限定する文言が見あたりませんから、法律で決めれば何でもできることになります。十分に考えられます。恐いことです。

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