書籍「戦争のない世界へ・5大陸20人が語り尽くす憲法9条」
グローバル9条キャンペーンのことは、福井弁護士9条の会でわざわざ福井まで来ていただいた笹本潤弁護士の講演の内容として以前にもご紹介したことがあります。→こちらです。
笹本弁護士とお会いする機会があり、グローバル9条キャンペーン編の書籍を紹介されて直ちに購入しました。
まだ、ぱらぱらとめくってみただけですが、世界から日本国憲法9条を見る視点の大切さを再度確認させて頂いた気がします。
「重要なことは、九条の要請する『軍隊・武器の廃絶』や『武力によらない平和』は、日本だけの運動では実現できないということです。憲法前文が『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持』すると唱っているのは、日本の市民が、平和を愛する海外の人たちと協力して、九条のように武力に頼らなくてもいい国際環境をつくることを求めているのです。」という下りは、憲法が目指した理想を喝破していると言えるのではないでしょうか。
北朝鮮や中国の脅威を持ち出して、だからこそ日本人の安全のために軍備は必要だという議論がそれなりの説得力を持って語られることが多いのですが、だからこそ、そういう武力に頼らなくてもいい国際環境をつくるように努力すべきだというのが、この書籍の発想の根本にあると思います。
日本国憲法は、武力を持たずに他力本願で平和を他国に依存するだけで日本の平和が実現するなんて甘いことは言っていないということを忘れてはいけないと思います。
念のために、日本国憲法の条文を引用しておきます。
日本国憲法前文(抜粋)
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
なお、「平和的生存権」という人権の観点から平和をとらえるとするならば、日本国憲法12条は、極めて大切で本質的なことを指摘しています。
日本国憲法12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
(まだ、読んでいる最中ですので、読後感を含めて書きかえるかも知れません)
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コメント
和歌山の金原です。遅ればせながら、私も「5大陸20人が語り尽くす憲法9条」を通読しました。色々な立場や考え方があるものだと思いましたが、私が特に注目したのは、韓国の李京柱(イ・キョンジュ)教授の以下の発言でした。
「韓国憲法は実は、1948年に制定した憲法の時から広い意味で平和憲法でした。侵略戦争を放棄しながら国軍の認定をし、その使命を国土防衛に限定(専守防衛)した上で、国軍の組織および運用を法律で定める方式、つまり法定主義を採用していました」「ところが、アメリカとの軍事同盟の下ではこの憲法は、紙の上の誓いにすぎませんでした」(同書81頁)
早速、インターネットで韓国憲法を検索してみました(容易に日本語訳が見つかりました)。1948年制定の独立回復後の最初の憲法を見てみると、
第6条 大韓民国はすべての侵略的戦争を否認る。
国軍は、国土防衛の神聖な義務を遂行することを 使命とする。
第61条 大統領は、国軍を統帥する。
国軍の組織及び編成は、法律で定める。
となっていました。
このような憲法下で、アメリカの要請により、韓国はベトナムに派兵し、5,000人の戦死者を出すとともに、5万人のベトナム人を殺したとされています。
歴史から教訓を学び取る重要性は、何も自国の歴史に限定されたことではなく、とりわけ自国と密接に関わりのある隣国の歴史にも目を配るべきでしょうね。
投稿: 金原徹雄 | 2007年9月11日 (火) 14時42分
コメントありがとうございます。
弁護士会(憲法委員会)で戦争違法化の歴史を勉強しています。日本国憲法9条ほどに徹底した憲法は残念ながら見当たりませんが、想像以上に多くの国が戦争を原則的に禁止したり、違法なものと規定していることが分かります。
不戦条約→国際連盟→国際連合という大きな戦争違法化の歴史の中で日本国憲法が人類の叡智の結晶と位置付けられることは間違いないと思います。
ただ、この結晶である日本国憲法9条は、今まで十分に尊重されて来ませんでした。
「グローバル9条キャンペーン」の発想は、国内だけにとらわれずに国際的に9条を広めようということで、その発想のすばらしさに感動しました。
投稿: 憲法日々徒然 | 2007年9月14日 (金) 14時16分