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2007年8月

2007年8月28日 (火)

「福井平和フェスタ2007」ご案内

Festa

 9月30日「輝け九条!市民がつくる福井平和フェスタ2007」が開催されます。福井県内の市民が集まって企画したもので、主催は、「輝け9条!市民がつくる福井平和フェスタ実行委員会」です(そのまんまですが(^^;)・・・)。

 福井駅前のAOSSAという福井市以外の方であっても比較的参加しやすい場所を選んでいます。

 8Fでは、香山リカさんの講演会などの大型企画が行われますし、6Fでは、フェスタに参加した市民が、それぞれ、小企画に工夫をこらしています。「被曝体験に学ぶ原爆の悲劇」「聞いて、話して、お話こんにちは-絵本・紙芝居の朗読-」「子ども向け映画上映」「すいとんの試食会」「フリーマーケット」など、おもしろそうなのがあります。他がおもしろくないというわけではないのです、決して。ただ、全部書くのが面倒なので省略しただけ。つまり、前記以外にもいろいろな企画があります。
 もちろん、福井弁護士9条の会のメンバーも参加をします。何をするかは当日のお楽しみです・・・。

 なお、入場は無料です。

 是非、是非、多くの方のご参加を!!

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2007年8月25日 (土)

新防人考(中日新聞・東京新聞)

 先日一部を記しておいた中日新聞(東京新聞)の連載「新防人考」は、意欲的な記事を書いている。
 本当は全文掲載してしまいたいところだけど、そうもいかない。
 今のところ、次のアドレスのページで、全部を見れるようになっている。

http://www.tokyo-np.co.jp/feature/sakimori/

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北九州小倉北区餓死事件

 7月20日少しだけ書いた北九州小倉北区で起きた男性の餓死事件のことについて、その後の動きが報道されている。

http://www.asahi.com/health/news/SEB200708200050.html
asahi.com 2007年08月21日
小倉北福祉事務所長を告発へ 孤独死問題で市民団体

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070825ddm041010157000c.html
毎日新聞 2007年8月25日 東京朝刊
北九州・孤独死問題:生活保護打ち切り、福祉事務所長告発

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-25/2007082501_01_0.html
2007年8月25日(土)「しんぶん赤旗」
北九州餓死 生活保護の受給権侵害
福祉事務所長を刑事告発
弁護士ら 「組織的犯罪だ」

 しんぶん赤旗は、相当に大きなスペースを割いて報道しているが、何故、他の新聞の扱いは小さいのだろう?
 今後解明すべき事柄はあるのかも知れないが、男性が生活保護の受給を受けられなくなってからわずかの間に死に至っており、日記には、働けないのに働くように強要された趣旨の記載があったことも報じられた。
 重大問題だと思う。

 人間、いつ何があるか分からない。数年前まで、人も羨む悠々自適の生活を送っていた人が、事件に巻き込まれたり、事故に遭遇し、あるいは他人の保証をしたりして、破産せざるを得なくなったケースをいやと言うほど見てきた。「自分だけは」と思いたいのが人間の性ではあるが、「こんなはずではなかった」とつぶやくことが多いのが現実である。
 それでも、働けるうちはいい。働く場所があるうちはいい。

 しかし、事故や病気が原因で追い込まれた人もいれば、高齢などが理由で働き口を探しても見つからないことがある。働いても働いても生活できるだけの給与を得られない人が増えている。

 そういう場合に最低限の保障をし、再出発の機会を保障するのが、福祉国家であり、国にそれを命じているのが、憲法25条である。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 しかし、今の政権政党=自民党、そして政府(阿倍内閣)は、こうした庶民の目線に立っていない。上ばかりを見ている。もちろん、そういった政治姿勢を歓迎する勢力があるのだろう。それも現実である。権力を持つとそれを濫用したくなるのが人間の性だとすれば、そういった欲望を圧倒的多数の庶民の立場から規制するのが憲法である。それを行使するのは国民である。

 参議院選挙における自民党の惨敗の原因を失言問題や阿倍総理の指導力のなさなどに矮小化しようとする報道もあるが、決してそうは思わないし、そのような分析は間違っている。
 今の自民党・政府が、庶民のことなどどうでもよいと考えていることに国民が気づいたからだ。単なる言葉の問題ではないし、「失言」というレベルの問題ではない。言葉の背後に潜む本音を見てしまったということだ。

 今こそ、憲法は、国民を守っているのだということ、国民が本気になれば、この国のありようを変えることができるのだということに確信を持ちたいと思う。

(追伸)

 ブログ「晴天とら日和」(http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/)におじゃましたところ、地元紙や地元のテレビは、さすがに詳しく報道している様子。
 そのエントリーはこちら→http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/51039661.html

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2007年8月24日 (金)

中日新聞の「新防人考4」-湾岸戦争で日本が拠出した130億ドルの行方

 中日新聞の「新防人考4」(2007年8月22日)の記事は、興味深い事実を書いていた。

 日本は、湾岸戦争で130億ドル(当時のレートで1兆7000億円)という多額の金員を拠出した。ところが、「血も汗も流さない」と批判を浴びたと言われる。記事では、「トラウマ」と指摘している。

 なるほど、9条を改憲すべしとする根拠にこのことがよく引き合いに出される。血や汗を流すことが国際貢献だ、だから9条を改定して軍隊を持ち、血も汗も流すべきだと。テロ特措法、イラク特措法制定の際や自衛隊法改正の際にも、このことが強調され、あっという間に国会を通過した。

 まぁ、私は、そもそもこういう議論の立て方自体がおかしいと思っているけど、義理や人情のしがらみに弱い日本人は、「国際貢献」という言葉に弱い。私自身も実は弱い。無視することはできない。そこで、中日新聞の記事は非常に重要になってくる。

 前記記事は、次のような事実を指摘している。

 「91年3月、クウェート政府は米国など30カ国に謝意を示す広告を米紙に掲載した。この中に日本の名前はなかった。」
 「ところが、実は130億ドルの大半が、多国籍軍の中核を成した米国に戦費として支払われた可能性が高いのだ。使途が公表された追加分90億ドル(1兆1800億円)の内訳をみると、米国へは1兆790億円が渡ったが、クウェートへ回されたのは、はるかに少ない約6億3000万円だけ。本来の目的である戦後復興に使われていないのだから、感謝の広告に日本の名前がないのもうなずける。」

 何のことはない。日本は、そのお金のほとんどをアメリカに、しかも戦費として支払っただけである。こんなことをしていたら、国際的に評価されるはずはない。クウェートだって、感謝できない。

 なお、この記事は、以下のような元政府高官の話を引用しつつ、本当に外務省のミスだったのかと疑問を留保する。トラウマが「自衛隊の海外活動を拡大するエネルギー源」としての命脈を保ち続けていると指摘する。

 「あれは、外務省のミスだ。戦費の大半を日本が負担したことをクウェートに説明しなかった。人的貢献をしなければ、世界的に評価されないというのは間違いだ」

 湾岸戦争における多額の金員の拠出をアメリカに集中させたことが、結果として、自衛隊の海外派兵を加速させてきたことは、指摘のとおりであり、少なくとも、政府がこれを利用したことは明白である。

 そうすると、一歩進めて考えれば、あり得ない話ではない。

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2007年8月16日 (木)

NHK「日本のこれから 考えてみませんか?憲法9条」

 NHKの「日本のこれから 考えてみませんか?憲法9条」を見た。
 番組のホームページ(http://www.nhk.or.jp/korekara/)によると、コンセプトは、以下のとおり。

 今年、日本国憲法は施行から60年を迎えました。また、5月には憲法改正の手続き法にあたる国民投票法が成立しました。こうした中、改憲の是非を巡り様々な議論が巻き起こっています。
 9条を改め、正式な軍を持つことを明記すべきだという考え方もあれば、戦力の放棄を掲げた憲法は世界的にも貴重で改めるべきではないという考え方もあります。
 そこで、終戦の日である8月15日に、一般視聴者や有識者の皆さんをお招きして徹底的に討論します。

 賛否についての数字を出してなかったので、正確には分からないが、一般視聴者の9条の改憲賛成派と反対派は、ほぼ同数という印象だった。

 率直に言って、驚いたのは、改憲を支持する方々の主張の中に、極めて理念的・抽象的な内容が多かったことだ。中には、論理の展開が急で(論理の飛躍と言ってもよい)おっしゃることの意味が咀嚼しきれないケースも散見された。感情的な不規則発言も目立ったかなと思う。改憲派の主張に虚心に耳を傾けてみたいと思って見始めたので、もっと、現実から出発し、どうやって平和を守るべきなのかという論理の展開を期待(?)していたが、肩すかしをくらった。
 他方で、改憲に反対する人たちの主張は、むしろ、とても現実的で、具体的な事実を踏まえて、押さえ気味に話していたという印象を持った。
 護憲=理想主義、改憲=現実主義という図式化は、昨日の番組を見る限り、当たっていない。
 結論が先にありきは、むしろ改憲派なのではないかとも思った。

 なお、NHKが用意した映像の中のあるフリーターの人が、9条改正に賛成し、「このまま生きて、死んで行っても、それだけのことだが、戦争が起きて、兵隊に志願して戦死すれば、英霊かどうかはともかくとして、国のために死んだと評価される」という趣旨の発言をされていたのが、とても強く心に残った。
 彼が何故そういう発言をしたのかについてまでは掘り下げていなかったので、真意は分からない。ただ、NHKが敢えてこの方の発言を用意したことからすると、その意味するところは、このままだと、ひたすらぎりぎりの生活を維持するために働き続け、働く意義や社会における自分の存在意義を感じることができずに死んで行くことになる。それならば、戦争でも起きて自分の「生」の意味を感じて死んでゆく方がよいという叫びではなかったかと思った。
 彼は、真剣に生きる意味を考えようとしているからこそ、そういう発想に行き着いたのではないかと思うと、この国のありように、怒りを覚える。

 憲法9条の問題は、生存権の保障とも深く結びついていると思う。

 また、日本が軍隊を持ち、戦争になった時、まっさきに戦場に送られるのは、決して富裕層からでないことは、誰も否定しないだろう。アメリカの例からしても、生活のために志願をする人たちが戦場に送られる。先ほどの彼は、そのことも分かっているのだと思う。

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2007年8月14日 (火)

映画「日本の青空」

Photo

 8月10日、福井のメトロ劇場で開かれた「日本の青空」の試写会に参加した。

 

 日本国憲法は、アメリカに押し付けられたものだ、だから自主憲法を制定するのだ、などの矛盾した乱暴な議論には、とてもついていけない。しかし、日本のどうしようもない政府が作った「明治憲法を少しだけ変えただけの憲法案」に呆れたアメリカ(GHQ)が、日本国憲法の原案を作成し、それを当時の頑迷な日本政府に押し付けたのは押し付けたのだろうと思っていた。

 いわゆる「押し付け憲法論」=「自主憲法制定論」には与しないが、かといって押し付けられた側面があるのは間違いないというのが、私の考え方だった。

 

 もちろん、私だって、憲法研究会の「憲法草案要綱」のことは知っているし、GHQが日本国憲法の制定の際に最も参考にしたことも知っているし、「憲法草案要綱」が植木枝盛研究の第一人者であった鈴木安蔵らによって起草されたことも知っている。

 

 しかし、GHQの立場からしてみれば、日本にも、まっとうな民主主義思想を持った憲法案があるなら参考に一応見ておこうかという程度の評価をしたと考えてた。まさか、それを「手本」にしたなんて、考えてもみなかった。

 

 しかし、根本的に考えを変える必要があるかも知れない。

 この映画によると、GHQは、日本の円滑な支配のために、日本人が受け入れやすい憲法案の策定に腐心した。きれいごとではない。それが賢明な支配の方法というわけである。天皇を象徴として残したのもそのためだ。GHQ案作成の際に憲法研究会の「憲法草案要綱」をベースにしたのも、真意はそこにあったのかも知れない。

 

 ただ、それだけにとどまらない。日本側の松本委員会とGHQとの政府案作成のための協議は、30時間超に及んだ。徹底的に議論がなされた。一方的な押しつけではなかったことが分かる。

 

 また、映画では登場しなかったが、GHQとの協議で完成した政府案は、日本の議会でさらに検討され、修正されている。森戸辰男の提案で加えられた生存権の25条が有名である。

 どっちにしても、大事なのは、当時の日本国民が、日本国憲法をどのように受け止めたかに尽きると私は考えているため、あまり制定過程を重視していなかったけど、きちんと検証してみる価値があるとも思った。

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2007年8月 6日 (月)

日弁連「憲法60周年記念シンポジウム」(2)・品川正治氏講演

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 7月22日に引き続き、日弁連「憲法60周年記念シンポジウム」の様子をご報告(紹介)します。

□ はじめ

 私が是非ご紹介しておきたいと思った品川正治さんの講演です。
 とにかく素晴らしく感動的な講演でした。

 私は、講演会が好きで、時間の許す限り出かけるようにしているのですが、「拍手の鳴りやまない」講演会は、初めてでした。

 それは、品川さんが、講演会で話をすること、聴衆に語りかけること、そのことに自分の命の意味を見つけようとされていて、そのことがひしひしと伝わって来るからではないでしょうか。しかし、これも所詮後から考えたものにすぎません。講演が終わって思わず拍手をした時には、ただただ感動し、その思いを拍手を続けることで表現したかっただけです。会場で拍手を止められなかった人たちは、それぞれの思いがあったんでしょうね。

 品川さんのご経歴です。東京大学法学部を卒業された後、日本興亜損害保険株式会社(旧日本火災)の社長、会長、経済同友会の副代表幹事・専務理事等を歴任され、現在でも、経済同友会の終身幹事の肩書をお持ちです。

 そして、お話をお聞きしていると、経済政策についてのご造詣が深いことを感じさせられる財界の方であることは間違いありません。しかし、最近は、自らの体験に基づく護憲の立場と新自由主義に対する批判的な立場から、全国各地で講演を行っていらっしゃいます。

(以下は、もちろん品川さんが7月21日に日弁連等が主催したシンポジウムで話された内容に基づいておりますが、あくまでも私のメモなどに基づくもので、趣旨を自分なりに理解して記述したつもりですが、感想・主観が入るのは当然で、品川さんの講演内容そのままでない箇所もあると思います。よって、記載に間違いがあれば、その責任は全て私にあることをお断りしておきます。品川さんのお話は、機会があれば、是非、直接聞いて下さい。)

□ 品川さんの戦争観

 品川さんの原点は、1924年(大正13年)生まれのいわゆる戦中派であり、実際に戦争を兵隊として体験されているところにあります。小学校に入った頃に満州事変、中学校に入った頃に日中戦争、高等学校に入った頃に太平洋戦争。迫撃砲の破片がまだ足に残っているとおっしゃっています。こうしてお聞きすると、正真正銘の戦中派とおっしゃる意味がよく分かります。

 第3高等学校2年生(注)で現役招集という形で入隊し、直ちに戦地に送られ、戦闘に参加されていますが、受験勉強を経て入った高等学校で非常なショックを受けたとおっしゃっています。「本当にあと2年しか生きておれない人間が学問をするとは一体どういうことなんだろう。みんな、全員が、2年以内に読み終えてしまいたいという本のリストを全部もっておりました」という状況。品川さん自身は、「死ぬまでに、あと2年の間に、カントの実践理性批判を読み終えて死にたい。・・原書で読んで死にたい。」そのように思われたそうです。
 まだ20歳にもなっていない青年時代に、死を現実のものと意識して生きていくということが、どういうことなのか、想像を絶しますが、私にとっては、壮絶な「戦争の現実」の告発でした。

 品川さんは、一浪、二浪の学生が次々と招集されて行く中で、当時、「国家が起こした戦争で国民の一人として、どう生き、どう死ぬのが正しいのか」を基本的な問題と捉えておられたが、後に、この問題の出し方自体が間違っていたと悟られる。
 「戦争というのは人間が起こすんです。天災とか地変ではございません。戦争を起こす人がおるから戦争になるんです。しかし同時に、それを許さないで止める努力ができるのも人間なんです。おまえはどっちなんだと、そういうのが私の基本的な戦争観としてはっきりと、後の60年間は私の座標軸として一度も揺らいでおりません。」

□ 戦争というもの

 高等学校2年で招集を受けた品川さんは、鳥取の連隊に入隊したそうです。その日、品川さんは、強いショックを受けたそうです。
 品川さんら現役入隊した約一〇〇名を最前列に並べ、連隊長は、ごく短い訓辞をしたそうです。
 「今日、入隊したこの男たちの顔をよく見ておけ。この男たちを殴った男は俺は切るぞ。この男たちは死にに行くんだ。わかったか。」
 軍隊に招集されるということは、生きて帰れない覚悟をして行くということ。だから、品川さんも、死を覚悟していた。だからこそ2年間でカントの実践理性批判を読み終えて死にたいと考えた。
 しかし、入隊したその日に「この男たちは死にに行くんだ」とはっきり言われれば、戦争・軍隊とは何であるかということを否応なく自覚させられるでしょう。凄まじい体験です。
 品川さんらは、そのお陰で、軍隊につきものの新兵いじめは全く受けず、2週間で前線に送られたそうです。
 なお、品川さんは、擲弾投手で、寝るときでも、体に12発の手榴弾を巻き付けていたそうで、殴られたりしなかったのは、そのせいでもあったと言われます。これもまたすごい話です。

□ 終戦と日本国憲法

 品川さんたちの戦闘軍が武装解除されたのは、11月。その後捕虜収容所でしばらく暮らし、翌5月に復員されたそうです。
 そのときのエピソードを2つお話し頂きました。

 1つは、捕虜収容所での話。陸軍士官学校を出たような将校などを中心に、署名運動が起きたそうです。将校らの主張は、日本政府が「終戦」と呼んだことに抗議をするもので、「敗戦をはっきり認めて、国力が充実すればこの恥は必ず雪いでみせるというのがこれからの日本民族の生き方ではないか」というものだったそうです。
 しかし、品川さんたち戦闘部隊だった人たちを中心に、それに対する激しい反対運動が起きたそうです。

「何を言っているんだ、300万の将兵を亡くし、1000万以上の中国人を殺し、最後には、一瞬にして広島、長崎で20万の命を失った。我々は終戦で結構だ。2度と戦争をしない国にするというのが我々のこれからの生き方なんだ。一体、あんたたちはどんな面下げて、これから、中国人、アジアの人たちと接しようとするのか。あれだけ他国を侵略して恥を雪ぐとは何事だ」

 大部分が終戦派ということでおさまったそうですが、品川さんは、サラリと、「血の雨が降りました」とおっしゃる。しかし、すさまじい論争だったことは想像できます。

 2は、復員の際の船内での出来事です。
 品川さんたちの部隊は、上陸の足止めをくっていたのだそうです。
 そのとき、ボロボロになった新聞が配られたそうです。それは、日本国憲法草案が発表された日の新聞だったのです。現在の日本国憲法の前文や9条そのままの草案だったそうです。

「その新聞を見て全員泣きました。よもや国家がそこまで踏み切ってくれるとは、我々は思っていなかったんです。これからの努力として、二度と戦争をしない国をどうつくらないといけないか、ということを考えておった。ところが、発表された憲法草案に、はっきりと陸海空軍は持たない、国の交戦権は認めない、そこまで書いている、ということを知って、これなら生きていける、これなら亡くなった戦友の魂も癒される。よくぞここまで思い切ってくれた。これならアジアに対する贖罪もできる。

 品川さんは、はじめて現憲法と出会ったその日を忘れられないとおっしゃいます。

□ 国民と支配政党との乖離

 戦争とは、人を殺すことであり、また自らも命をかけることであり、「勝つ」という戦争の最大の目的のために、あらゆる価値が、最も大切なはずの命さえも軽んじられるという現実を品川さんは体験されました。品川さんは、太平洋戦争が正しかったどうかという問題に対する結論は出されませんでしたが、「戦争はあらゆるものを動員する」という現実を直視され、その戦争の現実を出発点に考え、また、講演を聴きに来ている人々に考えて欲しいと訴えられる。命さえ捨てなければならない戦争において、それ以外の様々な人権が軽く扱われるのは当然だと。

 戦後、多くの国民が、日本国憲法を歓迎した。そのことは紛れもない事実。ところが、日本の支配政党と呼ばれる政党は、一度も、国民と二度と戦争をする国にはならないという決意をともにしていない。これほどに文化水準の高い国で、60年間、その状態が続いてきた。これも現実です。そういう中で、自衛隊ができ、有事立法ができ、特別措置法が次々とつくられ、米軍とのガイドラインも論議され、今や9条2項の旗はぼろぼろになってしまった。しかし、大事なのは、国民が、まだ旗竿を握って放していないということです。
 支配政党は、その国民が握った旗竿を放させてみせると言ってきているというわけです。

 9条2項の内容を持つ憲法を持っているのは、日本だけ。軍隊のある国、軍産複合体が経済を支配している国で憲法を改正して9条2項を持てといっても、今すぐには無理。しかし、21世紀は、国民が戦争を正面から問いただす世紀になるはず。9条2項の理念は、世界的に極めて重大な理念。紛争は起こるが、戦争にはしないというのが日本の憲法。日本が手放せば世界からその理念が消えてしまうという非常に重い理念=宝物。

□ 若い人へのメッセージ

 品川さんは、若い人たちに戦争を伝える際に、戦争に3つの定義を与えているとされます。

 1つは戦争ということになれば価値観が転倒してしまうよと。勝つためというのが最も高い価値を持って価値観の上位に来て、自由とか、人権、人類がこれだけ苦労して手に入れたそういう原理、その話は勝ってからだということになる。勝つためという価値観が一番前に出てしまうんだよ。一番大事な価値観だと、皆、思っておる命、それでさえ犠牲にして勝つという形になるんだよ。戦争というのはそういうものだよということを言います。

 もう1つは、戦争というのはすべてを動員するんだよと。なにも経済とか労働力とかいう問題だけではない。学問も動員するよ。人文科学も動員するよ。社会科学も動員するよ。戦争というのはそういうもんだよ。日本の場合にはそれこそ「豊葦原の瑞穂の国は」という形で神の国、神国史観、これが公式であっただけじゃなくて、それ以外の史観を唱えることができなかった。あのゲーテを生み、カントを生み、ヘーゲルを生み、ベートーベンを生んだドイツ民族というのは文明的には随分進んだ民族だというふうにはどなたでもお考えだと思うんです。そのドイツ民族をホロコーストと称してユダヤ民族を500万殺したんだよ。戦争というのはそういうもんなんだと。

 もう1つは普通の国のあり方としては三権分立といいますか、司法、行政、立法の三権分立はあたりまえの形として受け取られる。しかし、戦争ということになれば、その中心の権力の中に戦争を指導する部門というのがその中枢に座ってしまう、こういう国のあり方になってしまう、そういう話をします。

 若い人に向けられた品川さんのメッセージに感動します。

  

 

 ここまででも、力のこもった講演ですが、品川さんは、若い人へのメッセージに続けて、「ここで私は今日のもう一つの主題を申し上げます」とされ、「日本とアメリカとは価値観を共有している」とする最近の政界等の主張に対し、さらに力を込めて、反論されました。この日の講演の結論だと私は理解したのですが、「日本の国民の出番」に向けた品川さんのお話をご紹介します。

□ 「日本とアメリカが価値観を共有する」ことはありえない

 「アメリカは、その『戦争』をしている国であることを日本はもっと本気で考えるべきだ」と、物静かな品川さんが、少し声を張り上げて、おっしゃったのを忘れられません。
 平和憲法を持っている日本が、何故戦争をしているアメリカと価値観を共有できるのか、世界で原爆を落とした唯一の国であるアメリカと、その原爆を落とされた唯一の国である日本とが価値観を共有できるのか、この奇妙さ。何故違うと言えないのか。歴史をどう解釈したらいいのか。そんなことを沖縄の人に言えるのか。広島、長崎の人に言えるのか。

□ 国民の出番

 品川さんは、外交官だけの集まりの席で、日本とアメリカの価値観の違いについて、尋ねたそうです。「あなた達の力で日本とアメリカとは違うということを納得させることができますか」
 外交官の答えは、「できない」であったが、ものごとの本質をついた答えが、品川さんに返ってきました。それは「国民の力」でした。
 それができるのは日本国民だけ。国民の力だけ。国民投票で憲法9条をやめることに関しては、国民がノーと言ってしまえば、アメリカと日本は違うということを世界に宣言した格好になる。それは、単に日本のこれからのあり方だけの問題ではなく、世界史も変えるだけの大きなこと。それができるのは国民だけ。
 現役の方(外交官)からは拍手が起きたそうです。
 品川さんの締めくくりの言葉をなるべく正確に記しておきたいと思います。

 日本の国民の出番が来ました。アメリカの世界戦略を変えることができるのも,日本が「ノー」と言ってしまえば、世界2位の経済大国が資本主義のあり方もこれで行きますよという言い方を堂々としていけばそれでいいんじゃないか。日本の資本主義のやり方が間違っていたら、こんな世界2位になるはずはないんですよ。1人も外国人を主権の発動として殺さず、軍産複合体を持たないで世界2位の経済規模を築き上げた日本というのは自信を持っていいわけなんです。おかしいと思うことに関してはおかしいとはっきり言えばいいんです。しかし、それが言えるのは国民だけだという格好になったんです。国民の出番が来たということを、是非、みなさん方にお訴えして、みなさん方のこれからの憲法問題のみならず、この国のあり方、世界のあり方に関して俺は傍観者じゃないという立場になったんだ、本当にめずらしいくらい日本の国民の行動が世界史全体を変えるようなこんな時期というのは今までの歴史上は私は知らないですね。私は83まで生きながらえて本当によかったというのを率直に感じております。こういう時期に巡り合わして、しかし、それがノーという形を見るまで私が活動できるかどうかは、もう無理だろうと思いながら、しかし、今こそ訴えないと、この訴えるべき時期を自分が荏苒と過ごしたということを、これは一生、最後の悔いになってしまうんじゃないかと思って、みなさん方にこういう形で、もっと冷静に本当は話をすべきことなんでしょうけれども、私の訴えとしてみなさん方に今日はお話しした次第でございます。どうもご静聴ありがとうございました。

* 品川さんのお話は、資本主義のあり方にも及び、この点でも日米の価値観の共有を前提とした政策について厳しい批判をされています。私のこの報告は、私の力量不足のため、あるいは論点を絞って分かりやすくするため、憲法9条の問題に絞った内容になっています。その点で、品川さんの真意を十分にお伝えしきれていないことを危惧します。ただ、品川さんの思いは何とかお伝えできたのかと思います。

* なお、日弁連のシンポではないのですが、コメントをくださった金原徹雄弁護士が、九条の会・わかやまのホームページに、「九条の会・わかやま」と「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の共催で開催された「品川正治氏講演会『戦争・人間・憲法九条』」での品川さんの講演録の全文反訳を掲載されていますので、ご参照下さい。資本主義のあり方の問題についての品川さんのお考えをご理解頂けるものと思います。

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2007年8月 2日 (木)

8月暑い夏

 意味不明なタイトルをつけてしまいましたが、この夏、戦争、平和、憲法9条に関わるテーマの番組がたくさんあるそうなということで、暑い(熱い?)ということです。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「護憲ウォッチ!」(http://gokenwatch.exblog.jp/6032126)から頂いたトラックバックで知った、NHK「日本の、これから」(http://www.nhk.or.jp/korekara/)です。
 アンケート(https://www.nhk.or.jp/korekara/nh15_kn/enq.html)に答えても、何ももらえそうもないですが(NHKですもんね)、もっといいことあるかも。
 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「お玉おばさんでもわかる政治のお話」
 
http://otama.livedoor.biz/archives/50774647.html
で教えてもらった「NHKに受信料を払っていて、良かったな、と思える作品」の一覧です(現時点で終わったのもあります。気がつくのが遅かった。)
 (お玉さん、勝手にコピペしてごめんなさい)

=戦争と平和を考える=   2007年夏

===================
終戦・被爆特集番組
===================
「ピースTV ~ボクらのピースを探す旅~」
8月1日(水)19:30~19:55 NHK教育
出演:ふかわりょう、仲里依紗(女優)、池田貴史(ミュージシャン)
 沖縄戦のひめゆり学徒隊の生存者から、その体験を受け継ごうとする若者たちの話。
 反響次第で定時化もあるようです。ぜひ意見、感想をNHKにお寄せください。

■8/4
◇NHK教育(前9:30)
 「あした元気にな~れ!半分のさつまいも」
*海老名香葉子原作。東京大空襲で家族を失った「かよちゃん」
「きいに いちゃん」兄妹が終戦直後の不安な時代をたくましく
生きていく姿を描きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇NHK教育(後8:30)
「土曜かきこみTVスペシャル~戦争と平和を考えよう」
*3千人の子どもたちを対象に戦争と平和に関するアンケートを
実施し、子どもたちの本音を考ます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇NHK教育(後9:30)
 「中学生日記」
*ランディーズの高井俊彦が沖縄を旅し、現地の中学生に「戦争と平和、どう教わっていますか?」と質問します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇NHK教育(後10:25)
 「一期一会 キミにききたい!」
*戦争と平和に関して異なる価値観の若者同士の出会いを描きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇NHK教育(後11:00)
 「トップランナー」
*被爆者と家族の物語「夕凪の街 桜の園」を発表した映画監督
佐々部清 をゲストに迎え、戦争の愚かさを描き出す思いを聞きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇フジテレビ(後9:00)
  「ゾウのはな子」
*戦争中、上野動物園で餓死させられたゾウの「花子」と、悲しい
体験に 苦悩しながらも再起していく飼育員(反町隆史)の物語

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■8/5
◇NHKテレビ(後9:00 6日 後10:00)
「核クライシス」
*2夜連続で、核が「使える兵器」に変貌しつつあることを告発します
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇NHKラジオ(後11:45)
「ヒバクシャの声」
*世界中に暮らす被爆者から電話やファックスでNHK広島放送局に
寄せられた声を紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■8/6
◇NHKラジオ(後8:05) 
「原爆の日特集~カンボジア・復興への架け橋『ひろしまハウス』」
*被爆者で、建設に尽力した国近京子さんを追います。
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◇ NHKラジオ(深夜1:10)*6日~10日まで5夜連続
 「いま戦争を考える~平和な明日を築くために」
*戦争体験者の証言を伝えるとともに、今、戦地で救援活動に従事している人たちの声を聞き、平和のメッセージを発信します。
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■8/7 
◇NHKテレビ(後10:00)
「アメリカ秘密尋問所トレイシィ(仮題)」
*サンフランシスコの尋問所トレイシィでは、2千人以上の日本兵が
尋問を受け日本の情報がアメリカにもたらされました。その事実を追います。
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■8/8 NHK衛星(後11:10)*10日まで3夜連続
  「ドキュメンタリードラマ ニュルンベルク裁判(仮題)」
*ナチスドイツの幹部を戦争犯罪人として裁いたニュルンベルク裁判をテーマとします。イギリスBBC放送制作
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■8/9
◇NHKテレビ(後10:00)
「吉永小百合~想いを受け継ぐ子どもたちへ」
*「原爆詩の朗読会」を20年間続けてきた女優、吉永小百合の姿を描きます。
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◇NHKテレビ(後10:50)
「原爆のせいじゃなかとですか~長崎・原爆症認定への闘い(仮題)」
*原爆症認定をめぐる集団訴訟で長崎裁判の原告団長を務める森内実の活動を通して、狭き門である認定の現実を映します。
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◇NHKラジオ(後11:20)
「8月9日 その日、長崎が消えるまで」
*発行から30年以上がたった『長崎原爆戦災史』の改訂作業を追います。
 被爆者の証言やアメリカの資料から、8月9日を再現します。
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■8/10
◇フジテレビ(後9:00)*10日と2夜連続
    「はだしのゲン」
*中沢啓治が自らの被爆体験をもとに描いた作品の初のドラマ化。反戦思想を貫く父・大吉役に中井貴一。
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■8/11
◇NHKテレビ(後6:10)
「週間子どもニュース:世界の平和ミュージアム~子どもたちが描いた戦争」
*紛争に苦しむ子どもたちが描いた絵を紹介。ウガンダの兵士だった12歳の少年が描いたのは「子どもが自分の母親に銃を向けている絵」でした。
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■8/12
◇NHKテレビ(後9:00)
「鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争」
*『総員玉砕せよ』を原作としたドラマ。戦争体験をマンガに描こうと葛藤する昭和40年代の水木と、戦争の最前線にいた日々を交錯させて描きます。
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◇テレビ朝日(後2:00)
 「ザ・スクープスペシャル」
*被爆・終戦をテーマに放送します。
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■8/13
◇NHKテレビ(後10:00)
  「東京裁判 A級戦犯はこうして選ばれた」
*アメリカのA級戦犯関連資料をもとに巣鴨刑務所での取り調べを再現。
 A級戦犯選定の過程をひもときます。
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◇8/14 NHKテレビ(後10:00)
「東京裁判 パール判事の真実(仮題)」
*東京裁判で「全員無罪」を主張したインドのパール判事の思想や実像に迫ります
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◇8/16 NHK衛星(後10:10)
    「BS特集~証言の記録 マニラ市街戦」
*太平洋戦争最大の市街戦の実像に迫ります。
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8/17 NHK衛星(後10:10)
「実録 ニュルンベルク裁判」
*ニュルンベルク裁判についての当時の記録を再構成します。
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