9月20日の報道ステーションの報道は、より具体的だった。
○ ちょっとした基礎知識
海上自衛隊は、テロ特措法に基づき、アラビア海を中心としたインド洋で、給油活動に専念していると言われている。
国連の活動ではなく、アメリカ主導の「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」の海上阻止行動(武器・弾薬やテロリスト、資金源となる麻薬などの海上輸送を阻止する活動)に従事する米軍などの艦船に対する洋上補給(給油)である。
この「不朽の自由作戦」に参加している有志連合の国は相当数あるが、海上自衛隊がこれまでに給油した艦船ということになると、アメリカが最も多く、パキスタン、フランス、カナダ、イタリア、イギリス、ニュージーランド、ドイツ、ギリシア、オランダ、スペインなどとなる。
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などより)
とにかく、海上自衛隊は、アメリカのテロ報復攻撃としてのアフガン戦争に、給油という形で参加をしているのである。
ところが、この「不朽の自由作戦」(アフガン戦争)に参加する艦船への給油のはずが、イラク戦争に参加する艦船への給油にすり替わっているのではないかという点が問題となっている。
ちなみに、この「不朽の自由作戦」は、国連平和維持活動(PKO)である国際治安支援部隊(International Security Assistance Force、略称ISAF )とは、区別する必要がある。
○ 報道ステーションの報道の内容
報道内容を箇条書きで整理して見ると、以下のとおり。
- 日本は、これまでに、48万キロリットル(220億円分)の油を給油した。
- その給油がイラク戦争に転用されているのではないかとの疑惑を裏付ける資料が、アメリカで見つかった。
- 補給艦「ペコス」の航海記録(2003年2月25日)
6時37分 補給艦「ときわ」に接近
6時44分 併走開始
「ときわ」から受けた船舶用ディーゼル燃料1万8704バレル
10時13分 「ときわ」離れる
10時15分 「キティホーク」に合流するため針路変更
- 空母「キティホーク」の航海記録(2003年2月25日)
17時3分 「ペコス」と接近
17時37分 給油ホースを連結
17時45分 ポンプを開始
- 補給艦「ペコス」の航海記録(2003年2月25日)
20時4分 「カウペンス」が並ぶ
21時32分 右舷の給油ホース撤去
21時38分 「カウペンス」が離れる
- 「キティホーク」と「カウペンス」は、そのままペルシャ湾に展開し、3月20日、イラク戦争開始となる。
「カウペンス」→トマホークミサイルで先制攻撃
「キティホーク」→3000回にわたる艦載機出撃
- アフガン周辺における対テロ戦争とイラク戦争において、艦船の配置換えは多い。対テロ戦争参加の艦船の8割以上がイラク戦争へ参加していると指摘される。
- 番組に登場したブルッキングス研究所(アメリカ合衆国のシンクタンク)のマイケル・オハンロン上級研究員は、「日本は危険な場所への自衛隊派遣に消極的です。給油こそが日本ができる貢献なのです。イラクに向かう艦船への給油をしていなかったらむしろ驚きです。」と述べる。
- テロ特措法による給油先(2007年8月末現在)
アメリカ 351回
パキスタン 141回
フランス 94回
これらの事実も、断片的であって、給油がイラク戦争にどの程度流用されているのかを明らかにするものではない。
しかし、先日の江田氏の指摘も合わせて考えると、海上自衛隊の補給艦が給油した油がイラク戦争で使用されていることは、ほぼ間違いないと思う。
かくなるうえは、情報は全て公開した上で、実りある議論をして欲しい。
抽象的な議論はやめて欲しいものだ。
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