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2007年9月

2007年9月27日 (木)

テロ特措法(4)

 少し前のアサヒコムの記事
http://www.asahi.com/politics/update/0922/TKY200709220136.html

ですが、やはりというか、海上自衛隊の補給艦がイラク作戦にも参加していた米軍揚陸艦ジュノーに給油をしていたことが分かったとのことです。

 ジュノーは、2005年当時、イラクの自由作戦(OIF)の一環として、沖縄に駐留する海兵隊をイラク国内に投入するためペルシャ湾北部に派遣。この間、インド洋のアデン湾などで海自の補給艦から3回にわたって燃料、食料の補給を受けたとのこと。

 当時のジュノーのロナルド・ホートン艦長(47)(現米空母エンタープライズ艦長)は、朝日新聞記者のインタビューに応じ、「当時は、いまよりも頻繁に海自の補給艦から給油を受けた。日本の貢献は絶大だった」と述べたそうです。

 ジュノーは、「不朽の自由作戦」(アフガン戦争)にも組み込まれていたそうですから、「作戦の時期が明確に区別されない限り、海自から補給された燃料がどの作戦に消費されたかを特定するのは困難とみられる」とされてますが、そんな区別は無理でしょう。アメリカ自身が、そんな区別をせずに作戦を遂行しているのでしょうから。

 

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2007年9月23日 (日)

テロ特措法(3)

 報道ステーションの報道は、今ひとつすっきりしないと思っていた。
 そこで、いろいろ検索しているうちに、報道ステーションにも登場されていた梅林宏道氏が代表をされている「ピースデポ」のサイトに行き当たった。

ここ↓
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/oil.htm

 報道ステーションの報道は、この「ピースデポ」の調査結果に基づいて編集されていると推測される。
 この「ピースデポ」の記事は、細かい資料から事実を追っていて、報道ステーションの報道なんかより、はるかに分かりやすい。

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テロ特措法(2)

 9月20日の報道ステーションの報道は、より具体的だった。

○ ちょっとした基礎知識

 海上自衛隊は、テロ特措法に基づき、アラビア海を中心としたインド洋で、給油活動に専念していると言われている。
 国連の活動ではなく、アメリカ主導の「不朽の自由作戦 (OEF: Operation Enduring Freedom)」の海上阻止行動(武器・弾薬やテロリスト、資金源となる麻薬などの海上輸送を阻止する活動)に従事する米軍などの艦船に対する洋上補給(給油)である。

 この「不朽の自由作戦」に参加している有志連合の国は相当数あるが、海上自衛隊がこれまでに給油した艦船ということになると、アメリカが最も多く、パキスタン、フランス、カナダ、イタリア、イギリス、ニュージーランド、ドイツ、ギリシア、オランダ、スペインなどとなる。

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などより)

 とにかく、海上自衛隊は、アメリカのテロ報復攻撃としてのアフガン戦争に、給油という形で参加をしているのである。

 ところが、この「不朽の自由作戦」(アフガン戦争)に参加する艦船への給油のはずが、イラク戦争に参加する艦船への給油にすり替わっているのではないかという点が問題となっている。

 ちなみに、この「不朽の自由作戦」は、国連平和維持活動(PKO)である国際治安支援部隊(International Security Assistance Force、略称ISAF )とは、区別する必要がある。

 

○ 報道ステーションの報道の内容

 報道内容を箇条書きで整理して見ると、以下のとおり。

  •  日本は、これまでに、48万キロリットル(220億円分)の油を給油した。
  •  その給油がイラク戦争に転用されているのではないかとの疑惑を裏付ける資料が、アメリカで見つかった。
  • 補給艦「ペコス」の航海記録(2003年2月25日)
    6時37分 補給艦「ときわ」に接近
    6時44分 併走開始
    「ときわ」から受けた船舶用ディーゼル燃料1万8704バレル
    10時13分 「ときわ」離れる
    10時15分 「キティホーク」に合流するため針路変更
  • 空母「キティホーク」の航海記録(2003年2月25日)
    17時3分 「ペコス」と接近
    17時37分 給油ホースを連結
    17時45分 ポンプを開始
  • 補給艦「ペコス」の航海記録(2003年2月25日)
    20時4分 「カウペンス」が並ぶ
    21時32分 右舷の給油ホース撤去
    21時38分 「カウペンス」が離れる
  •  「キティホーク」と「カウペンス」は、そのままペルシャ湾に展開し、3月20日、イラク戦争開始となる。
     「カウペンス」→トマホークミサイルで先制攻撃
     「キティホーク」→3000回にわたる艦載機出撃
  •  アフガン周辺における対テロ戦争とイラク戦争において、艦船の配置換えは多い。対テロ戦争参加の艦船の8割以上がイラク戦争へ参加していると指摘される。
  •  番組に登場したブルッキングス研究所(アメリカ合衆国のシンクタンク)のマイケル・オハンロン上級研究員は、「日本は危険な場所への自衛隊派遣に消極的です。給油こそが日本ができる貢献なのです。イラクに向かう艦船への給油をしていなかったらむしろ驚きです。」と述べる。
  •  テロ特措法による給油先(2007年8月末現在)
    アメリカ 351回
    パキスタン 141回
    フランス 94回

 これらの事実も、断片的であって、給油がイラク戦争にどの程度流用されているのかを明らかにするものではない。

 しかし、先日の江田氏の指摘も合わせて考えると、海上自衛隊の補給艦が給油した油がイラク戦争で使用されていることは、ほぼ間違いないと思う。

 かくなるうえは、情報は全て公開した上で、実りある議論をして欲しい。

 抽象的な議論はやめて欲しいものだ。

 

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2007年9月22日 (土)

テロ特措法(1)

○ 情報のないままの議論の不毛さ

 テロ特措法(正式には、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」という長ったらしい法律)の延長問題について、考えてみたい。

 というのは、民主党の小沢氏が延長に反対する姿勢を明確にし、これに対し、安倍氏が、「職を賭して」などと言い出し、そして、小沢氏が会ってくれないので辞めると言い出した・・・今の自民党総裁選挙の大騒ぎは、ここから始まったのだと思うから。

 しかし、このテロ特措法に基づき自衛隊が何をやっているのか、アフガニスタンの状況がどうなっているのか、事実は、ほとんど伝わって来ない。少なくとも、新聞やテレビを見ていても、上滑りのお話ばかりで、判断するための材料がない。事実に基づかない空中戦の議論を聞いていると、率直に言って、うんざりだし、不毛である。

 元はと言えば、政府が悪い。情報を伝えていないのだから。
 情報を公開せずに、首相が約束してきちゃったんだから、国際公約(この言葉の使い方にも問題があるけど)なんだから、賛成しろというのは、専制国家と同じである。

○ 給油の85%がイラク戦争のため?

 ポツポツと出始めているのは、自衛隊の給油の実態である。
 朝まで生テレビ(8月31日)における江田氏の発言は、これらのキーワードで検索をかけると、多くのサイトやブログがとりあげていることが分かる。
 要は、海上自衛隊の補給船(「海上無料ガソリンスタンド」)が給油した油(防衛庁が発表しているこれまでの米国艦船への補給は38万キロリットル)の85%ぐらい(8662万9675ガロン=32万7893キロリットル)は、イラク戦争に展開するアメリカの艦船に使われていたという事実である。
 インド洋に展開する自衛隊の補給船が給油している油は、イラク戦争に使われているということは、以前から、多くの人が指摘してきたことだが、江田氏の指摘は、具体的な資料に基づく具体的な数量を示してのものだったので、衝撃的だった。
 そもそも、自衛隊の補給船は、アメリカなどの補給船に給油をしているから、アメリカなどの補給船がさらにどこに使用するかはお任せになっているし、給油の場所が場所(http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/41/Arabian_Sea_map.png)だから、アメリカなどからすれば、ある意味自然である。
 また、江田氏も指摘しているが、日本の政府が、そんなことは十分に分かっていながら、国民を騙して来たとすれば、問題は極めて重要である。

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2007年9月13日 (木)

安倍総理辞任報道について

 安倍氏の辞任の報については、様々な情報が飛び交っている。
 しかし、次の総理大臣が誰になるのかで盛り上げているテレビ番組が目立ち、だんだんあきれてくる。

 忘れてはいけない。安倍氏を総理大臣にしたのは、自民党だ。そんな自民党内部での次期総裁=総理大臣の議論をそんなに大きく取り上げていいのか。国民の意識と大きくかけ離れた話をしているという自覚はないのか。
 安倍氏の無責任さは、イコール自民党の無責任でもある。また、小泉→安倍と続いた新自由主義=弱肉強食路線は、自民党全体が承認してここまで来た。
 その路線に対して、国民がノーを突きつけたのが参議院選挙だったし、安倍氏は、テロ特措法による給油が国益なのだと最後まで未練がましく主張していたけど、国民がこれを支持していないことは世論調査によっても明らかになって来ている。

 今の衆議院の政治地図は、小泉氏の時代、まだ弱肉強食路線の本質が国民に見えていない時代に行われた選挙によるものである。今最も国民意思に近いのは、言うまでもなく、参議院の状況である。

 そのことを踏まえた議論を横におき、あるいは導入部分で少しだけ議論し、自民党内の首のすげ替えに競馬の本命・対抗を予想するがごとく騒いでいるようなワイドショー番組は、いい加減にしてもらいたいものだ。

 国民の立場からすれば、「今こそ、衆議院を解散して民意を問え!」というのが筋のはずである。
 ついでに言えば、こんな無責任な総理大臣の下で、国民の多数の意思を踏みにじって、強行採決につぐ強行採決によって成立させられた数多くの憲法違反の法律を見直すべきである!!と言いたい。
 

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2007年9月11日 (火)

広がる格差(中日新聞)

 2007年9月11日中日新聞社説「広がる格差・非正規雇用に歯止めを」
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2007091102047825.html

 具体的な数字に基づいた分かりやすい記事だ。

  • 「総務省の調査では二〇〇六年の非正規雇用者は千六百六十三万人で全雇用者の33・2%を占め十年間で六百二十万人も増えた。その結果、労働者の低賃金化と所得格差が顕著になった。」
  • 「今年の労働経済白書によると、企業は業績回復で株主配当や役員報酬を大幅に増やした。だが労働分配率は二〇〇一年度の74・2%から、〇五年度は70・6%まで低下した。」
  • 「年収をみると正規雇用者は二百万-一千万円未満まで幅広く分布するが、パート・アルバイトは百五十万円未満が過半数、派遣社員や契約・嘱託は二百万-三百万円未満が約三割と、低水準に集中している。」
  • 「厚生労働省の〇五年所得再分配調査では、格差を示すジニ係数は当初所得で〇・五二六三、再分配後も〇・三八七三と過去最大になった。」

 富める者はより一層富を増やし、その分、貧困層が増大している。

 この記事も指摘しているが、労働者派遣法は、労働関係に大きな変化をもたらした。その最たるものが、「1日だけの日雇い派遣」である。私の依頼人にもそういう方がいらっしゃる。毎日夕方から夜、明日の仕事が携帯電話や携帯メールに入る。明日どうなるか分からない。こんな状態では安心して生活できない。

 この国の根幹が揺らいでいるように思う。感覚的過ぎるだろうか。

 社説は、「これ以上の労働法の規制緩和はやめるべきだ」としているが、せっかくの記事が最後にきて尻すぼみだ。
 行き過ぎた規制緩和は是正すべきだ。

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テロ特措法と安倍総理の決意?

 安倍総理の発言が話題になっている。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20070909ddm002010156000c.html

 この毎日新聞の記事によると、

「(インド洋での海上自衛隊の給油)活動継続が求められている。どういう法的担保にしていくかは工夫の余地がある。給油活動は日本の国際社会における責任だから、何とか果たさなければならない。民主党とできる限り話し合いをしたい。あらゆる可能性を考えていかねばならない。
 今行っている海上での給油活動が海上阻止活動の不可欠な要素になっているから、そこを何とか維持したい。新法を考えるということなら、どういう形にするかを政府・与党でよく考えていかねばならない。(給油活動継続は)対米というよりも対外的な公約で、それだけ私の責任は重たい。すべての力を出し切らなければならない。活動を継続するために総理として全力を傾ける。

と述べたとのことである。

 しかし、強い違和感を感じる。

 テロ特措法は、本来時限立法(施行後2年で効力を失うとされていた)であったはずである。それをずるずると延長してきたという経緯がある。今回だって、そのままにしておけば失効する(2年が6年に延長されて終了)だけの話である。逆に、さらに延長すれば、なんと4回目の延長ということになる。
 国際法と国内法との関係については、諸説があって一概には言えないが、現在の日本の通説的な考え方である二元説によれば、国際法は、国内法で認められるか国会での承認がなければ、効力を有しない。まして、安倍首相の言う「国際社会における責任」「対外的な公約」というあいまいなものを国会の承認もないままに軽々しく使っていいはずはない。
 法が元々時限立法であることからすると、十分な議論も行わずに多数の力を借りて、ずるずると延長してきたことの方が問題である。

 現在のアフガニスタンの状況について何も触れず、自衛隊が具体的にどのような給油活動を行っているか、その給油活動がどのような役割を果たしているのかについて何も触れず、抽象的あいまいな言葉で自己の信念を正当化しようとする意図だけが伝わってくるが、「国益」ということを言いたいのであれば、そのあたりの具体的な状況を説明せずして延長しようとなれば、議論の前提を欠くことになる。
 むしろ、自衛隊が給油活動を続けていること、そのことが知られるようになることこそが国益を損なうという議論がある。
 給油活動を続けるべきか、給油活動を停止すべきか、どちらが国益を損なう結果になるかについては、情報がきちんと国民に報告され、説明責任がきちんと果たされてはじめて意味のある議論ができる。情報を隠し続けながら言葉でごまかす国民を馬鹿にした政治はいい加減にやめて欲しい。

 しかも、安倍総理は、「海上自衛隊のインド洋での給油活動が継続できなければ退陣する意向を表明した」(http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20070910k0000e010109000c.html)そうなので、あくまでも自衛隊の海外における活動の是非を自らの最大の政治目標だとしたということになるのであろう。憲法改正を第1目標に掲げる安倍氏らしい選択である。

 これだけ、年金問題、政治とカネの問題、貧困の問題が指摘されている中で、依然として、憲法改正や自衛隊の活動の問題を最重点課題と考える感覚は、どういうんだろう。各種の世論調査や政府の調査で表れている国民生活の悪化(貧困化)、社会福祉制度の脆弱化こそが、国民の最大の関心事であると思う。日々の暮らしや将来の生活に不安を抱えている国民からすると、給油活動(しかも100億円を超える膨大な費用を使ってる)などのことより、安倍氏が政治生命を賭ける課題は別にあるだろうとしみじみ思う。

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