福井県のカラ出張とは?(2)
先日(10月14日)に引き続き、福井県のカラ出張問題について、書いておきたい。
この裁判の第1の争点は、この裁判が最高裁まで行き、そして差し戻しになった理由にかかる入口論の問題であった。
一言で言うと、「監査請求の対象の特定」ということになる。
問題のカラ出張は、先日書いたとおり(http://3courage.cocolog-nifty.com/ombuds_fukui/2006/10/post_cdf7.html)、平成6年4月から平成9年12月までの長きにわたるカラ出張である。
出張に行ったことにしてお金を引き出すというのであるから、単価はそれほどのものではない。福井県旅費調査委員会の調査結果を見ると、21億6203万0384円は、15万5465件の架空の出張の蓄積である。単純に割り算をすると、1件あたり1万3906円である。
福井県自身が設置した旅費調査委員会が相当の時間をかけて調査し、カラ出張の合計額を円単位で報告しているのだし、私たちは、個々の支出ごとの状況を問題にしているのではなく、実際に主張していないのに出張をしたかのように装って支出したこと自体を(だけを)違法としているのだから、個々の支出ごとに検証する必要はない。監査委員(ひいては裁判所-裁判所は訴訟の対象の特定の問題に関わる)はその点だけに限定して判断すればよいはずである。これが私たちの主張である。
これに対し、福井県は、支出は、本来、個々の支出ごとに違法性が問題になる。だから、例えば、「平成6年4月12日に東京に出張し、その支出が3万8000円とされているが、実際にはその日に東京には行っていないのだから、これが違法である」というように、個々の支出ごとに具体的に主張すべきだとする。
納税者の立場にある県民の皆さんはどう思われるだろうか。
旅費調査委員会は、相当の時間をかけて(結果として税金を使って)、旅費支出一つ一つを検証し、前記の金額と件数のカラ出張が存在することを確認した。だとすれば、その全てが違法であることは、余りにも明らかであり、いまさら改めて旅費支出一つ一つを検証し直す必要などないし、無駄でもあるし、県民がそれをやることは、物理的に不可能でもある。
裁判では、争いのない事実という考え方がある。ある意味、前記の総額21億6203万0384円がカラ出張であった事実は、争いのない事実である。その争いのない事実を所与の前提として判断をすればよいのであって、改めて、その一つ一つを検討すべきではない。訴訟経済(監査だから「監査経済」と言うべきか?)の無駄というものだ。
最高裁の判決のこの問題に関する判断は、以下のとおりである。極めて常識的な判断である。
「前記事実関係等によれば,本件監査請求は,旅費調査委員会等の各調査においてそれぞれ事務処理上不適切な支出とされたものである本件各旅費の支出が違法な公金の支出であるとして,これによる県の損害をてん補するために必要な措置を講ずることを求めるものであり,旅費調査委員会等の各調査においては,それぞれ対象とする旅費の支出について1件ごとに不適切なものであるかどうかを調査したというのであるから,本件監査請求において,対象とする各支出,すなわち,支出負担行為,支出命令及び法232条の4第1項にいう狭義の支出について,支出に係る部課,支出年月目,支出金額等の詳細が個別的,具体的に摘示されていなくとも,県監査委員において,本件監査請求の対象を特定して認識することができる程度に摘示されていたものということができる。そうすると,本件監査請求は,請求の対象の特定に欠けるところはないというべきである。」
(坪)
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