福井県のカラ出張とは?(4)
差し戻し審第2の争点は、知事の責任である。
本件住民訴訟は、公金の支出の違法を理由に、知事にその返還を求めている。
少し分かりにくいところなのだが、旅費を含めた公金に関する支出権限は、本来的に知事にあるが、行政実務では、どの自治体でも、「専決事項」として、首長は部課長クラスに内部的に権限をゆだねて処理をしている。あるいは、内部的に委任をしている場合もある。
そうするとどうなるということが第2の争点である。
元知事は、最高裁の次の内容の判決に従えば、知事に責任はないと主張している。
「右専決を任された補助職員が管理者の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、管理者は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体に対し、右補助職員がした財務会計上の違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である。」
もちろん、私たちは、最高裁判決を無視しているわけではない。しかし、本件カラ出張は、そういったレベルの問題だったのかが問われねばならない。
旅費調査委員会の調査結果を見ればわかるとおり、福井県では、カラ出張が全庁に長期間にわたって蔓延していた。しかも、平成6年から9年と言えば、福井県のみならず、全国的に自治体におけるカラ出張が問題になっていたのであるし、それを受け、平成8年12月19日付で、自治事務次官から都道府県知事等宛に「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組等について(通知)」という文書が送られていて、そこには、「最近、地方公共団体の一部において、旅費、食糧費等の不適正な執行が問題となっていることについては、国民の間に地方公務員への不信感を惹起させ、ひいては行政に対する信頼を損ないかねないものであるので、各地方公共団体においては、公務員倫理の確立と厳正なる予算の執行を図られるよう特に留意されたい」旨記載がなされていた。
このように全国的にカラ出張が問題となって、新聞紙上では、頻繁に指摘がなされていた上に、自治事務次官の通知に接し、知事は何をしていたのかという問題である。
私たちは、日常的な旅費支出をチェックするという問題ではもはやなくなっていたと考えている。まさしく本来的な支出権限者である知事の出番だったはずなのに、有効な手だてをとらず、結果として、この事務次官の通知以降もカラ出張は全庁に続いていたのである。最高裁判決に従ったとしても、「指揮監督上の義務」違反の責任は重いと言わざるを得ない。
なお、私たちは、平成5年6月から平成9年11月までの新聞記事を手分けして調査し、整理したものを裁判所に提出した。全国の多くの自治体で蔓延していた状況が改めて明らかになったし、記事の中には、全国市民オンブズマン連絡会が福井県におけるカラ出張の疑いが極めて強い出張を指摘したとの報道もあった。平成8年7月27日のことです。この指摘を受けて、福井県は、知事は、どうしたんでしょうね。(坪)
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コメント
>元知事は、最高裁の次の内容の判決に従えば、知事に責任はないと主張している。
「右専決を任された補助職員が管理者の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、管理者は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体に対し、右補助職員がした財務会計上の違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である。」
知事に責任がないとの根拠は、どの点を言っているのか判りませんので、教えて下さい。お願いします。
投稿: 山田 稔 | 2007年1月31日 (水) 16:50