告発状提出
<告発状提出>
◇ 概要
(日時) 2020年12月08日
(提出先) 福井地方検察庁
(告発人) 市民オンブズマン福井のメンバー5名
(代理人) 弁護士2名
(被告発人)石川与三吉
◇ 告発状
第1 告発の趣旨
被告発人の以下の告発事実に記載の所為は、刑法第246条2項の詐欺罪に該当する。
よって、捜査のうえ厳重に処罰することを求め、告発する。
第2 告発事実
被告発人は、2013年4月から2016年3月まで福井県議会議員であった者である。
福井県においては、福井県議会事務局において、政務活動費の交付を受けた福井県議会議員からの報告書、支払証明書、領収書等の写しを添付した政務活動費に係る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)の提出を受け、その年度において交付を受けた政務活動費からその年度に行った政務活動による支出の総額を控除して残余がない場合にはその返還を免れる一方、当該残余がある場合には、当該残余額に相当する額を返還することとなることを条件として、福井県議会議員に政務活動費を交付していた。
被告発人は、虚偽の内容を記載した視察報告書、支払証明書等を利用し、支出総額を水増しするなどした収支報告書を福井県議会事務局に提出し、同事務局長らを欺いて、実際には視察していない場所への交通費・宿泊費等の金額に相当する政務活動費の返還を免れようと企てた。
被告発人は、自らが雇用する事務員に、虚偽の内容を記載した視察報告書、支払証明書等(以下、「虚偽文書等」という。)を、2013年4月から2016年12月までの間に、44回にわたって作成させ、あるいは、自ら作成するなどして、同虚偽文書等に係る金額を政務活動費として支出した旨の同虚偽文書等の写し等を添付した収支報告書を作成した上、真実は、同虚偽文書等に係る正当な支出は存在しないのに、これあるように装い、2013年度から2016年度にかけて、福井県議会事務局において、同事務局長に前記収支報告書を提出し、同事務局長らをして、その旨誤信させて、返還すべき残余額を確定させ、よって、以下の各年度の前記虚偽文書等の金額
2013年度 67万9380円
2014年度 70万8950円
2015年度 95万4320円
2016年度 47万8150円
合計282万0800円の返還を免れさせ、
もって人を欺いて財産上不法の利益を得たものである。
第3 告発に至る経緯及び告発の理由
1 告発事実発覚の経緯
2020年2月8日、被告発人が2013年度から2016年度にかけて計44回のカラ出張を繰り返し、政務活動費計282万0800円を不正に受給した疑いがあることが、新聞等で報道された。同年2月12日、被告発人は視察報告書の大半が事実と異なることを認め、福井県議会議員を辞職し、記者会見を開いた。
その記者会見において、被告発人は、視察報報告書については、被告発人の事務所において勤務している80代の男性事務員が自分の知らないところで作成したと主張し、自身の関与を否定し、男性事務員の管理責任をとる形で辞職するとした。また、44回のカラ出張先はいずれも被告発人の地元敦賀市の建設会社「塩浜工業」が請け負った工事現場であったが、同社から虚偽の視察報告書を作るための資料等の提供を受けたとの疑いについても否定した。
その後、被告発人は、2020年2月19日に、44回のカラ出張に支出したとされる費用の合計額から、県議会から支給される上限を超えていた各年度の自己負担分を差し引いた算定額を返還した。
2020年7月3日、福井県議会の各派代表者会議において、畑孝幸議長は、福井県議会としての事実確認を行うことを提案し、全会派から了承された。
2020年9月1日、福井県議会は「石川与三吉元福井県議会議員の政務活動費にかかる聴取報告について」を公表した。同報告書は、①被告発人から2013年度から2016年度において提出されていた塩浜工業関係現場の県外視察報告書は架空のものであった、②架空の視察報告書作成に関するやり取りは、塩浜工業関係者と被告発人本人との間で直接行われ、視察報告書に必要な書類等は、塩浜工業の役員が社員に指示を出して取り揃えて、被告発人に渡していた、と結論づけた。
2 被告発人の行為の悪質性
告発事実記載の行為は、被告発人の選挙区内の企業が加担している点、金額が2013年度から2016年度の4年間だけで280万円以上と高額である点(資料から判明している分であり、それ以前にもカラ出張がなされ、政務調査費(当時)の返還を不正に免れた疑いは強い。)で極めて悪質であり、福井県議会議員を辞職し、返還を免れていた金員を福井県に返金して済む問題ではない。
被告発人は、共同通信社による疑惑報道がなければ、税金で成り立つ制度を悪用した罪悪感も持たずに、不正に返還を免れた金員を自分で自由に使える金員と考え、身勝手に費消していた可能性が高い。しかも、被告発人は、記者会見において、代理人弁護士を同席させ、自らが雇用した事務員が政務活動費の不正支出を勝手にやったと述べて、自身の関与は完全に否定した。
しかし、視察報告書の作成を事務員が単独で行ったものではなく、被告発人が行っていた疑いが強いことは、福井県議会の前記聴取報告の通りである。また、被告発人が、自らの収支報告書に全く目を通さず福井県議会事務局に提出したとは考えられず、収支報告書の支出内容を確認すれば、自らが出張していない視察報告書があることや、出張にかかる交通費や宿泊費が異常に高額であることに容易に気付くことができ、収支報告書を訂正して提出することができたはずである。それゆえ、被告発人が主張するように事務員が勝手に行ったことではなく、被告発人が主導してカラ出張の視察報告書等を作成したことは確実である。
福井県議会は、政務活動費について、2017年度から宿泊費や交通費の領収書の写し提出を義務化している。被告発人の2013年度から2016年度におけるカラ出張は、領収書の写し提出が義務化される前の制度の隙間を悪用したものであり、法令を遵守すべき県議会議員が、制度の隙間を悪用した点でも悪質であって、厳しい処罰が必要である。
よって、被告発人について、告発の趣旨記載のとおりの処罰を求める。
第4 添付資料(いずれも全て写し)
1 公文書一部公開決定通知書(福議第336号令和2年9月16日)
2 石川与三吉元福井県議会議員の政務活動費にかかる聴取報告について(令和2年8月21日)
3 供覧処理票(令和2年8月12日供覧開始)(石川元議員事務所事務員への聴取結果および株式会社塩浜工業への聴取結果)
4 供覧処理票(令和2年8月18日供覧開始)(石川元議員事務所事務員への聴取結果)
5 新聞記事
6 政務活動費マニュアル(2013年4月及び2013年7月版)
◇ 参考記事
≪県外視察「全てカラ出張」 県議会が石川元県議の調査発表≫
https://www.chunichi.co.jp/article/113844
(2020年9月2日 中日新聞)
・ 元県議の石川与三吉氏(90)がカラ出張により二百八十二万円の政務活動費を不正受給していた問題で、調査をしてきた県議会は一日、指摘された二〇一三〜一六年度の計四十四回の県外視察は「全てカラ出張と確認された」と発表した。
石川氏が視察報告書に添付した写真は、塩浜工業(敦賀市)が提供していたと明らかにした。議員辞職し、全額返還されたことから刑事告訴はしない方針。
畑孝幸議長と、石川氏の地元敦賀市で調査した田中宏典、辻一憲両議員らが県議会議事堂で会見して発表した。
・ 聞き取り調査に対し塩浜工業の役員らが、視察報告書に添付された写真や名刺は「元役員(当時の営業本部長)が社員に指示して提供した」と認めた。視察先はいずれも塩浜工業の県外の建設現場だったが、同社から「全てで石川氏は現場に行っていない」と説明もあったという。
・ 石川氏は二月、視察報告書は自分の事務所の男性事務員が単独で作成したと主張したため、この男性への聞き取りもした。
男性は「石川氏が作成した下書きを清書しただけ」と説明。県議会として、架空の視察報告書の作成は「塩浜工業関係者と石川氏との間で直接行われていた」と結論づけた。
・ 畑議長は「議員を辞職し、利息も含め全額返還して道義的・社会的な責任は果たされている」と述べ、刑事告訴はしないとした。石川氏は入院中で、今回の調査でも面会できておらず「不可欠な弁明が聞けない中で、告訴に進むのは妥当でない」(議会局)ことも理由の一つ。 石川氏が塩浜工業に何らかの利益供与を図っていたかどうかは分からなかった。
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