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2022年4月

2022年4月21日 (木)

福井検察審査会の議決について

2022年4月21日

 

福井検察審査会の議決について

 

市民オンブズマン福井

 

<これまでの経緯について>

 

石川与三吉氏(以下、「石川氏」という。)が、県議だった2013~2016年度にかけて計44回、虚偽視察(カラ出張)報告書を県議会に提出し、政務活動費約282万円を不正受給した詐欺事件について、市民オンブズマン福井の会員5名が、2021年6月24日に福井地方検察庁に告発状を提出した。

 

福井地方検察庁は2022年2月25日付けで、告発を受理すると同時に不起訴とする処分を行った(2013年度分に関しては時効、2014年度分以降に関しては起訴猶予)。

そのため、前記の5名の告発者らは2022年3月16日に、起訴猶予となった2014年度分以降の不正受給(詐欺事件)に関して、起訴を求めて検察審査会に審査申立書を提出し、受理された(令和4年福井検察審査会審査事件(申立)第15号)。

 

検察審査会は同年4月12日付で、「本件不起訴処分は相当である」とする議決を行った。審査申立人らは、上記の議決の要旨通知書を同年4月18日に受領した。

 

 

1 「議決の理由」 

 議決の要旨通知書の「議決の理由」部分の内容は下記のとおりである。

「被疑者の本件行為は、公職在任中に、長期間にわたり繰り返し多数回行われたものであり、返還を免れた金額も多額に及んでいることから、犯情は悪いと言わざるを得ない。一方で、被疑者は、本件発覚後に職を辞しており、一定の社会的制裁を受けたと評し得ることや、被害金額を全額返還し、被害の回復が図られていること等の考慮すべき事情があるものの、県民の負託を受け、高い倫理観と法令遵守が求められる公人として、それでもなお強く非難されるべき行為であり、刑事責任を軽視することはできないと言うべきである。 

 

 しかしながら、本件不起訴記録並びに審査申立書及び資料等を精査し、慎重に審査した結果、被疑者が老齢であることに加え、記録に顕れている一切の諸情状を考慮すると、検察官がした不起訴処分の裁定を覆し、被疑者の刑事責任を追及することが相当であるとの判断には至らなかった。

 よって、上記趣旨のとおり議決する。」

2 市民オンブズマン福井の見解について

 

 「議決の理由」の第1段落は、審査申立人らが主張した「不起訴処分を不当とする理由」とほぼ同内容であり、審査申立人らの主張が検察審査会の委員にも理解されたこと、市民感覚として本件事件が刑事責任を問われるべき悪質な事件であることを示している。

 

また、石川氏による政務活動費の不正受給が詐欺罪に該当することについては、「議決の理由」においても当然の前提とされており、石川氏が、本件が発覚した当初に、事務員が無断で行ったという弁解が虚偽であったことは明らかである。石川氏が虚偽の弁解をしてまで罪を免れようとしたことも考慮するなら、本件は起訴されるべきであった。

 

 ところが、第2段落において、「被疑者が老齢である」こと以外に具体的に理由が述べられていないにもかかわらず、「記録に顕れている一切の諸情状を考慮すると」、不起訴処分が相当であるとされた。

 

確かに、高齢であることは、不起訴とする理由の一要素にはなり得るが、本件の被害金額の多額さ、県議会議員という法令遵守を求められる人物による犯罪であること、政務活動費の不正受給が全国的にも問題とされていること等を考慮するなら、同種事件の再発を防止するためにも、起訴が相当とされるべき事件であり、今回の検察審査会の議決は、検察審査会に求められている役割を果たしていないといわざるを得ない。

 

3 福井県議会による再発防止対策の必要性

 

 元同僚議員であった石川氏が長期間にわたって詐欺行為を繰り返してきてきたことを、見逃してきた福井県議会の責任は決して小さいものではない。

 

市民オンブズマン福井としては、福井県議会に対し、今回の事件が政務活動費の不正受給を許す仕組みとなっていることが原因であることを踏まえ、改めて、政務活動費の支給方法、使途の透明化、書類の保存や公開方法等について、二度と不正受給が起こらないような制度に改めることに、直ちに取り組むことを求める。

 

以上

 

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